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2010.07.15 *Thu
 降りしきる雨がすべてを洗い流してくれるような感覚に包まれた。外から聞こえてくる雨音が夢から覚ましてくれるような気がした。もう何度も思い返した。
ジャラ……ジャラ……。右手に繋がれた鎖が音を立ててその存在感を示している。これが現実なんだと私に語りかけてくる。
目の前に転がる人の山、部屋に充満する腐臭、血の匂い。私以外に動く影はない。この状況は私が望んだことだったのだろうか。もうなにもわからなかった。いや、すべてわかっていたのかもしれない……
――私に好意を向けてくれたあの子……
――私を好きといってくれたあの子……
――私の好きなあの子……
――私を一番愛してくれているあの子……

 先に好きになったのはどっちだったか。出会いは平凡なもの。入学式で隣り合って並んで座ったのが始まり。
「ねぇ、私と友達になろうよ」
こんなありきたりな一言。何の考えもないような適当な一言。でもなぜかその言葉にはどこか必死な感情が混じっている気がした。この子を見捨ててはいけないと思わせる何かがあった。
この子には私しか見えていない、そんな第一印象だった。
 でも、違ったのかもしれない。必死だったのはきっと私だったんだ。始めての出会いなのに彼女に見捨てられたくなかった。きっと私は恋に落ちたんだろう。一目ぼれに近い感情、どうしようもないくらいに恋だったんだろう。
――今なら分かる、あの子もあのとき私に恋をしたんだろう。

 それからの私たちはどこに行くにも何をするにも常に一緒だった。隣にいることが自然だった。あの子が隣にいないそんな世界が考えられなかった。何をしたい、何を求めている、そんなことをわざわざ話さなくても意思疎通ができた。
不思議な感覚。心地いい感覚。
言葉ではなく理性ではなく偶然ではなく、感情で本能で運命で結ばれている感覚。私の心があの子に占拠されている感覚。あの子の心を私が占拠している感覚。
2人で1人、1人が2人。世界は私とあの子とその他大勢でしかない。一心同体。私とあの子は結ばれている。――見えない鎖で。

 告白はあの子から。突然、しかし必然、そして転機。ただの儀式的なものでしかなく告白なんて無意味だった。すでに私たちは絆だった。あの子は私を束縛するため、束縛されるためのきっかけが欲しかったのだろう。私はそれを理解して承諾した。あの子にすべてを捧げることは私の誓い。私のすべてを掌握することがあの子の願いなのだ。

 そばにいたかった。抱きしめたかった。手をつないていたかった。きれいな瞳を見つめていたかった。美しい声を聞いていたかった。あなたが放つ香りを嗅いでいたかった。あの子がだけがほしかった。
あの子がほしかったほしかったほしかったほしかったほしかったほしかったほしかっ……
 あの子も同じだった。私だけを求めた、求められた。私の意識を感情を独占しようとした。私の行動も言動もすべて自由を独占しようとしていた。私と一緒に堕ちようとした。
どれだけ落ちても不安が残った。あの子と繋がっていないことが怖かった。

 曇天に包まれ雨の降る日、私たちは真の意味で結ばれた。あの子は私を鎖で拘束した。あの子と私を結んでいた見えない鎖が現実のものになった。うれしかった。見えない怖さが無くなった。そこにあることが心を私を高揚させた。
それからのあの子との日々は幸せだった。あの子に拘束され、鑑賞され、愛された。そしてわたしも受け入れた。ずっとずっとずっとそばにいた。そばにいたかった。これ以上の幸福は無かった。あの子と一緒にいられる。それだけで私は生きていけた。なにもいらなかった。

――そう思っていた
――でもなにかがクルイハジメタ
あの子はいつしか拒絶するようになった。私をではない、他者を私以外のすべてを拒絶した。あの子は私以外のすべてに殺意をもっていた。
最初は父だった。息をしていない父が目の前に倒れていた。いつものような父だったがそこにもういなかった。次は母、きっと母だ。全身がつぶれて原型などどこにも無かった。ただの肉片が目の前に転がっていた。姉は目の前で他界した。私の目の前で心臓が抉り出された。最後の一言は助けてだっただろうか。妹は切断されていた。いくつかの細切れになっていく姿を目の前で見ていた。男の人が目をくりぬかれていた。あの子のお父さんだろうか。身体からあらゆるものが抜かれていた。横に転がっている。あの子のお母さんかな。転がっていた。もうそれ以上記憶することをやめた。
私の知り合いはどんどん死んでいった。目の前に積まれていく家族、クラスメイト……。誰が誰だかもう分からない。分かる必要もない。私はあの子だけが認識できてあの子だけを想えればそれでいい。以前は世界は私とあの子とその他大勢だった。今はもう世界は私とあの子だけしかない、そうに違いない。私とあの子だけでいい。
私とあの子の関係、きっと歪んでいるのだろう。でもこの歪んだ愛が私たちには一番だった。最高だった。そして最低だった。最後は……どうかあの子と一緒に……最高の幸福を………………

扉が開いた。アノコガヤッテキタ。アマオトが奏でるメロディ、そしてあの子のエガオガワタシノサイゴノ……

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